今回は、レッサー・ユリィという画家について書いていきたいと思います。

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展覧会『印象派・光の系譜』

今、三菱一号館美術館で開催中である「印象派•光の系譜」展に行ってまいりました。エルサレムのイスラエル博物館にある印象派コレクションがきております!印象派に先駆けたクールベ、コロー、ブーダン、そして印象派ど真ん中のモネ、ルノワール、シスレー、ピサロ、この流れを発展させたポスト印象派のセザンヌ、ファン・ゴッホ、ゴーガン、さらに派生してナビ派のボナールやヴュイヤールもきております。

印象派を鑑賞するには三菱一号館美術館ってめちゃくちゃいいロケーションなんですよね。東京駅も皇居周辺も今の時期は紅葉していて秋晴れの中歩くと本当に気持ちいいです。美術館は中庭が素晴らしいので緑を浴びて噴水を浴びて、印象派絵画の中に入ったような暖かい気持ちになれる美術館なんですよ。つまり展覧会だけでなくシチュエーションも最強!これは行くしかない!あと今ゴッホ展やっててそっちの方が鬼混みなはずだからそこまで混んでない!今がベスト!!って感じです。ぜひ皆さん混み合う前に、この秋のうちに行ってください!展覧会は1月半ばまでやってます。

日本で無名!?レッサー・ユリィの衝撃

さて、この展覧会が始まってからマジで話題になってるのがレッサー・ユリィという画家なんです。日本においては全くの無名といっていい知名度なんですが、ポストカードが即日完売するほど人気だそう。口コミを見ても皆さんレッサーユリィが良かった、他にどこ行けば作品見られるのか、画集はないのか、情報が少なすぎる、などと話題になっているんですね。

目玉の作品は、「夜のポツダム広場」です。ベルリンの夜、光の灯る繁華街と雨に塗れる道、傘をさす人々が描かれています。

レッサー・ユリィ『夜のポツダム広場』

実物を見る前、事前にスマホでチェックした段階では、まず色気のある絵だなと思いました。印象派ってモネとかピサロみたいな朗らかな光に溢れた幸福な作風をイメージしますし展覧会自体そういったイメージの絵が多い中で、この絵はまずテーマとして目を引く強さがあります。夜の風景という時点で異色ですし、光の系譜という展覧会の中で人工の夜景を描いていますし、雨も悲しいイメージですよね。魅力を感じざるを得ないというか、惹きつけられる色気があるなと。そしてオシャレ感が今どきだし、無名ってとこもレッサーユリィって名前もバズりそうだなーと思って実物を観に行きました。

そしてこの絵の持つ強烈な感情のブレというか歪み、惹きつける技法としての巧さ、魂を感じる筆運びなどなどを目の当たりにして、うわーーーこれはなめてたわ、すごい、すごいぞ!実物見た人が一番印象に残ったって言いたくなるのわかる!絶対に絵の前でとまってしまうパワー!!

ということで、なぜ衝撃を受けるのかその理由を紐解いていきたいなと思います。ダラダラ語ります。

『夜のポツダム広場』の魅力

まず黄色の鮮やかさに目がいくと思うんですけど、作品の目の前に行くとそれが顕著でした。雨に濡れた地面に反射した光なので水にぼやけたような表現がされているんですね。そのぼやけた筆のタッチが想像よりも大振りで、実際に濡れた光を見るよりも大きくぼかされてると思うんですよ。それによって泣く寸前の視界のように感じてしまいました。目に涙を溜めて視界がぶれる感じを味わって、悲しい気持ちとか感情の揺さぶり、動揺なんかが同時に引きおこりました。

それがひとつと、もうひとつ、上部の空はもやがかかってるんですが、両脇に建物があることによって真ん中のもやにギュギュっと視界が集中するようになっていました。遠近感の傾斜がすーごくって、もやに吸い込まれていくような感覚がありました。スマホで画像を見たりポストカードを見たりしても遠近感をそこまで感じないんですが、実物はもうすっごかったです…

そもそも遠近感ってもしかして実物の方が強く感じるものなんでしょうか?私に専門的な知識がないのでお恥ずかしいんですが理由があるのかもしれません。単純に印刷しきれない視覚情報によって遠近感を強く感じるだけなのかもしれません。とにかく遠近感がすっごい。左側の建物が意外にバキッと塗られていて、空はもやもやとしていて、そのタッチの違いで遠近感を強く出せてたりするのかなあ。わからない…

そして次に絵の構成の妙について。遠近感の真ん中を中心として四象限になってる感じがしたんですよ。左下の縦長の光と、右下の傘をさしている人々の縦長感が合っていますし、左上と右上は四角く光る窓の光が揃っています。つまり右と左でブロックごとに似せたような感じになってる気がするんですよね。それでいて、上と下の縦ラインもリンクしてるんですよ。それが色です。右は上も下も青っぽくて、左は緑と黄色が混ざり合っていくような感じになってます。ちなみに青と黄色は補色の関係にあって強い印象を受ける組み合わせですから、これも絵から受ける印象の強さに繋がっていると思いました。

この四象限が真ん中の遠近感強い箇所に吸い込まれていくような感覚と相まってプロペラみたいにグニャアッと歪んでいくような感覚になったんですよね。それが泣く寸前のぼやけた視界に溶けていって、不安感をかきたてられるような感覚。とても感情が揺さぶられる絵だなと思います。

印象派光の系譜展での他3作品

今回の展覧会にはレッサー・ユリィの作品はあと3作品きていたので、それぞれ感じたことについてもサクッと書いていきますね。

まず『赤い絨毯』という絵。後ろを向いた女性がカーテン?布?を直しているのか縫っているのか、という絵です。

レッサー・ユリィ『赤い絨毯』

この絵の前に立って一番驚いたのはタッチの多彩さですね。ぼやーっと書いているところとバキッと書いているところ、細かいところ雑なところ、絵の具を盛っているところなどなど、超バラバラに描かれていました。例えば真ん中を細かく描いて外側をぼかすとかはよくあると思うんですけどそういう法則性がわからなかったんですよね。光が当たってるところをぼかして描いてる…?のか…?みたいな。印象派と言えば光の表現なので光の表現が強調されているのはわかるんですが、あまりに大胆かつ意外性がある筆遣いで感動しました。実物ならではの圧を感じる作品でした。

あとタイトルおしゃれすぎ!!赤い絨毯て!!後ろを向いた女性、とかじゃなく赤い絨毯…インパクトを感じるタイトル付けも印象派の中では結構レア(たぶん)なのかなと思って惹かれました。

レッサー・ユリィ『風景』

次に『風景』という絵です。こちらは撮影可能な部屋に飾られていたのでSNSで見る機会があるんじゃないかなと思います。油絵具のテカりをうまく使っている絵なのかなーと思いました。木もテカテカしてたりキラキラしてるように見えたり、水面の反射が思い切ってて冷たい印象が強くなってたりとか。寒色を使ってることもあって寒さを感じる絵でした。

もう一つ『冬のベルリン』という作品もきていましたが、これも道のツヤツヤ感から寒さを実感できるような感覚がありました。

レッサー・ユリィ『冬のベルリン』

『夜のポツダム広場』でもそうですが、構図をしっかり作りこむ画家なのかなーとも思いましたね。ブロックをしっかり分けてるような構図なのに、危うい印象を受けるのはなんでだろう…どっしり感よりもギリギリ張りつめてるような印象を受ける構図なのかなと思いました。これは不勉強で何にどんな効果があるかまではわかりませんすみません!

レッサー・ユリィは印象派?分離派?

で、レッサー・ユリィってどんな画家なの?って皆さん気になってると思うんですけど結論から言うと色々調べてもわかりませんでした!本当に日本で無名で、ググっても全然日本語サイトが出てこないんです。英語とかドイツ語がわかる人求む…!!ウィキペディアをかじっただけなんですけど、一応その話も書きます。

ウィキではドイツ印象派と書かれてるんですけど、絵を見た感じでは象徴主義なんじゃないかなーとまず思ったんですよね。印象派の朗らかさとはかけ離れてる、感情を表現するような描き方してるのになーと思ったりとか。

で、ウィキの経歴を追ったらミュンヘン分離派に入ってるしベルリン分離派でも展覧会してるんですよ。なので分離派って言った方がいいんじゃないの…?と思ったりとか。

分離派ってなんなのって人は、イメージしやすいのがクリムトだと思います。クリムトはウィーン分離派なんですがミュンヘン分離派とベルリン分離派の間くらいの時代にできた分離派です。たぶん。世紀末美術とも言われるんですが、退廃的な絵だとイメージするとわかりやすいのかなと。

じゃあレッサー・ユリィは分離派ど真ん中なのね~というとそうではなくて、ベルリン分離派の他のメンバーの絵を見ているとレッサー・ユリィは異色というか、確かに印象派だなと思わせる絵なんですよ…(有名どころではムンク・ホドラー・ノルデ・キルヒナーなどが所属していました)。

ドイツ語文化圏で生まれた分離派とフランス周辺で花開いた印象派ってどっちがどう影響したって言いきれない部分があると思うので、混ざってる画家なんだなーってことでいいんですけどね。そんな結論付けをしました。もっと細かく言うとユリィが絵を身に着けた若い頃に印象派が台頭して、晩年に成熟してきた頃に分離派が活躍していて、技法は印象派のまま世紀末美術の退廃感が出てきた感じ?なのかな?と思いました。

レッサー・ユリィの生きた時代背景

ベルリン分離派の流れで少し時代背景についても触れたいと思います。世紀末美術って、世界はもう終わりだ!国もうまくいかない!世界はどうなるの?って不安感から生まれた文化です。クリムトのウィーン分離派がまさにそれで、オーストリア・ハプスブルク家が滅亡寸前の時に生まれたブームなんですよね。で、ベルリン分離派も同じような流れがありました。

その頃のドイツ文化を、ワイマール文化と言うそうです。第一次世界大戦でドイツが負けて、そこからナチス台頭までの時代を指します。この間にいろんな文化が花開いて、その一部にベルリン分離派が生まれました。

その時代について思いを馳せると本当にいろんな感情が生まれます。ドイツは負けて、賠償金を払わされたり国としてガッタガタになってしまって、インフレが起こったりした頃なんですよね。ベルリンはど真ん中で大混乱だったんだと思います。その中で生きていた人たちは、あーでもないこーでもないと言いながら文化を刺激して育てていってたんですよね。

その背景を思うと、『夜のポツダム広場』の絵に見られるような歪みや悲しみも、人々がそういった不安感を抱えてたからなのかなとか妄想がはかどります。

以上!!!終わります!!!

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