2020年1月12日、世田谷美術館、企画展『奈良原一高のスペイン――約束の旅』

写真展巡りレポ『奈良原一高のスペイン――約束の旅』

心に残った美メモ

闘牛の写真から、命のやりとりというか真剣さを感じる。戦後の混乱の中だからこそできた闘牛と熱狂。

戦利品

世田谷美術館にグッズ扱いがなかったため、なし。

参考書籍

戦後の日本写真史についての本を中古で購入。
『昭和をとらえた写真家の眼−戦後写真の歩みをたどる』松本 徳彦,単行本

レポ日記

0歳3ヶ月の子供をベビーカーに乗せ、二度目の世田谷美術館へ。徒歩圏内ですからね、常連になっていきましょう。

前回は平日でほぼ貸し切り状態だったんですが、今回は土曜日ということでパラパラと人はいました。それでもかなり空いていて快適!やっぱりベビーカーで見るならこれくらい空いてなきゃなあ…と実感しました。子供は終始大人しくしてくれていたし快適に回れて大満足。

そして今回は、ちょうど1週間前にスペインに行っていた夫を誘いました。行ってきたばっかりだから写真を見るだけでも「そうそう!こんなとこだった!」となって面白いかなーと思いまして。夫はわりと美術館とか博物館とか好きな人ですしたまのデートもいいかなと。

結果的には、もちろん楽しんでくれたようだけども夫が行っていたバルセロナの方はフランスに近い北に位置し、写真展の写真は南部がメインだったので、「へー今度はこっち側にも行ってみたい」的な面白さだったようです。

むしろ、私は17歳の時にメキシコに2週間ほど旅行したことがあるのですがその雰囲気に近いものを感じて私の方が懐かしくなったりして。

事前知識はほぼゼロ。写真展って思えば初めてかもしれないってくらい写真家さんとか技法とかちんぷんかんぷんです。奈良原さんは『王国』って写真集で有名な人で『ヨーロッパ・静止した時間』ってのが「静」を感じる写真集、今回の『約束の旅』は反対に「動」を感じる写真集だ!ってことだけフワーっと知ってる、って感じで臨みました。

写真集にはエッセイもついてるからか、壁にポエムというか奈良原さんの言葉がぽつぽつと書かれていて雰囲気出てました。入り込める空間になってるのが美術館のいいところですよね~家で写真集見てるだけではこうならないなーと。

逆に、写真の1枚1枚には説明があるわけじゃないんですよね。絵の鑑賞では結構解説がついてるので見終わってから「文字ばっかり見てたような…?」ってなることも多いんですが、写真だけを見てればいいって感じで良かったです。展示の構成は3章あって、章ごとには説明がありますけどね。

静と動の対比を感じるのがメインかなーと思っていましたが、「動」の部分は「まあ南部の陽気な人ってこんな感じだよね」ってイメージのままで心動かされず。旅行行きたいなって感じです。

それよりも、闘牛の写真に惹かれました。説明に書いてあった、戦後の動乱だからこそできた本気の闘牛(もっとちゃんと書かれていたはずですがうろ覚えです)というのを加味して見ると本当に迫力がある。今スペインに行って闘牛を見ても、既にスポーツになってしまっているはずです。戦後の頃はなんでもありの「命のやりとり」だったんだな…それを民衆は見て熱狂するってどんな感覚なんだろう…って不思議な気持ちになりました。このトリップ感が味わえただけで満足です。

夫は「この時代に海外を長期間旅しようって奴ヤバいよなって話をちょうどスペインでしてた。まさにこの人がそう。戦後だし冷戦やってるしで世界がどうなるかわかんない時に、だからこそって言って海外に飛び出せるのは相当タフで賢くないとできない。今いる2世3世もタフだけど1世はヤバい」みたいなことを言ってました。旅行直後のタイミングで連れてきてよかった!

そして、グラフィックデザイナーであり親友である勝井三雄さんとのコラボ作品の展示とやらもありました。

今はフォトショやアプリで一発変換できるような効果が紹介されてますが、当時は先鋭的だったんだろうな~と。というかそれの先駆者ですね。デザインの歴史とか写真の歴史に疎いので、そこらへんもっと知りたいなあと思わされました。これは美術的な観点というよりも私の仕事がウェブデザインなど扱うのでそっちの興味ですね。

このコーナーには、婦人公論という雑誌の表紙を手掛けたということでたくさん展示がありました。私も夫も当時の雑誌の特集内容の方が気になって面白かったです。「子を産むか産まないかの選択は自由」「結婚するには」「今時のOL」「働きながら輝く」みたいなワードがバシバシ出ていて、今も昔も変わらないんだなーと思えて面白かった~。これは完全に当初の目的と違った見方になってしまってますが。バックナンバーのキーホルダーとか作ったら絶対可愛いな~。

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参考書籍感想文

そう、今回はグッズ的な戦利品がなかったんですよ。写真集が欲しいほどでもなく、簡単なお土産品は売っておらず…このままだと来たこともすぐ忘れてしまいそうで怖い!

気になったことはあるにはあるんですが、書籍を買うとまたお金がかかるからな~~と…

迷っていたら、アマゾンにめちゃくちゃ古いっぽいけど戦後の写真家をフィーチャーした本が送料込みの¥350でありました。奈良原さんについても記述があるようなので即購入!

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いやーまずかなり内容の濃い本なのでこれで一本記事書けちゃうんですが…

あくまで美術館レポのついでという立ち位置で感想を書くと、タイトルの通り「戦後の写真家」の雰囲気を浚うのに素晴らしい本でした。

想像してた内容は、写真の撮り方の流行なんかを時代背景とともに紹介してくれて、その時売れた写真家さんを例として挙げてんのかな?と思っていたんですが、舐めてました。

実際は、50人以上の写真家の一生を敗戦と絡めて記述しており、真剣に思いを馳せながら読むと映画を50本見たような気にもさせられるという突拍子もないものでした…それでいて、8月15日の敗戦にはじまり、「戦後」の編纂もしっかりとリアルに感じ取れるという。

奈良原さんはちょうど真ん中くらいで出てくるのですが、奈良原さんが写真家の中でどういう革新的な存在だったのかももちろん語られていて、「奈良原さんの客観的な情報が欲しい」「戦後の写真家さんを体系立てて知りたい」という当初の目的はもちろん達成できました。

それ以上に収穫が多いというか…多すぎるというか…なんせ50人以上出てくるので、それぞれの一生を理解するのはまだまだできず流し見程度でしか読めていません。その中でも気になった写真や写真家さんについて軽く調べただけでも展覧会や写真集が出てくる出てくる…!

今は絵画の方に興味が高まってたので写真は箸休めのつもりだったんですが、見たいものがもっともっと増えました。

そして、絵画と写真とどっちつかずで知識を入れていて混乱してきたところ、絵画の「印象派」とリンクする部分を見つけて嬉しい気持ちに。そうだよね~関連するところはあるよね~。

奈良原さんたちが映像派と呼ばれたこと、そして「印象だけの写真だ」と言われたという一文を見た時に、モネとルノワールが最初に印象派展を開いた時に「印象でしかない」と言われた話をババッと思い出してゾクゾクしました。

とりとめないですが終わります!